2012年8月23日木曜日

『砂糖の歴史』 エリザベス・アボット

この書籍も、今までの自分の研究を根本的に見なおさねばならないことを感じさせられました。
私は「奄美の歴史」は日本の歴史において非常に「不都合な歴史」と常々思ってきました。
あの歯切れの良い小熊英二氏でさえ「日本人の境界」で深いりすることをためらう地域ですから、よほど覚悟を持って歴史認識を考えないといけないと思っています。
やはり、一番の問題は村落によっては人口比3割を超えたという、ヤンチュの問題です。
奴隷、人身売買、年季奉公というような分析用語で簡単に括るわけには行きません。
色々と読みあさりましたが、今回読んだこの書籍はタイトルが「砂糖の歴史」と言いながら、実は近代奴隷制度の歴史であり、生活史でもありました。
『近世奄美の支配と社会』 (松下志朗 1983  第一書房)と一緒に読んで頂ければ、他人事ではないことに気付かされる筈です。
この書では中国とインドがプランテーション化を免れた地域として扱い、年季奉公者の部分を大きく取り上げていますが、奄美や台湾を考える時にはそれでは済まされないと思います。
オランダを媒介として仕組まれたシステムとして(専売制と日本の歴史家は呼ぶでしょうが)、近代奴隷制度による植民地としての視角を持つべき事を確証させてくれた書籍です。

目次
砂糖の歴史【さとう】【れきし】
2011年5月20日 初版印刷
2011年5月30日 初版発行
著 者  エリザベス・アボット
訳 者  樋口幸子
装幌者  岩瀬聡
発行者  小野寺優
発行所  株式会社河出書房新社

 序 章 7


第1部 西洋を征服した東洋の美味 17

 第1章 「砂糖」王の台頭 18

 第2章 砂糖の大衆化 56


第2部 黒い砂糖 93

 第3章 アフリカ化されたサトウキビ畑 94

 第4章 白人が創り出した世界 150

 第5章 砂糖が世界を動かす 181


第2部 抵抗と奴隷制廃止 227

 第6章 人種差別、抵抗、反乱、そして革命 228

 第7章 血まみれの砂糖 - 奴隷貿易廃止運動 266

 第8章 怪物退治―奴隷制と年季奉公制 297

 第9章 キューバとルイジアナ―北アメリカ向けの砂糖 326


 第4部 甘くなる世界 375

  第10章 砂糖農園の出稼ぎ移民たち 376

  第11章 セントルイスへ来て、見て、食べて! 421

  第12章 砂糖の遺産と将来 458



  謝 辞 497

  訳者あとがき 500

  参考文献 513

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